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(解説)
 
 
まず、解説に入る前に、会社法を勉強する上での大きな視点について、イメージも取り入れつつみていきましょう。
 
私が会社法にもつイメージは中世ヨーロッパの大航海時代です。
 
新大陸や食料、お宝を求めて船で長期間の旅にでる、夢と現実が交錯する世界…会社というのも、いわば社会という大海原に旅立つ新しい船を造って航海していくのと同じようなイメージです。
 
目的は、新大陸や食料、お宝など利益になるものを見つけて国を発展させることです。
 
つまり、会社は営利社団法人ですから、いかに利益を追求して会社の規模をどんどん大きくし、会社内部にとどまらず、対外的にも影響力を増すことで、社会や国の発展に寄与することが目的です。
 
大海原には、荒波も待ち受けていますから、船員やその船がもたらす利益を待っている関係者に迷惑をかけないような頑丈な船を造り、少し壊れても適切に修復しながら航海をしていく必要があります。
 
同じように、会社が設立されれば、取締役などの会社の機関はもちろん出資者たる株主や債権者、その他の取引関係者など沢山の人が関わっていきますから、会社やそれらの利害関係者に迷惑がかからないように、会社の設立・経営は慎重にしなければなりません。
 
反面、お宝探しは早いもの勝ちですから、必要以上に頑丈な船を造り、船を守ることばかりに時間をかけていては、いつまでたってもお宝などを発見することはできません。
 
そのため、ある程度の頑丈な船ができたら出向して、後は、航海しながら迅速かつ臨機応変に困難を乗り切り、できるだけ早くお宝などを発見して持ち帰ることも必要です。
 
同じように、できるだけスムーズに会社を設立し、迅速かつ臨機応変に経営判断をしながら、利益を追求して社会に早期に還元していくことも必要です。
 
このように、会社経営には、慎重さと迅速さのバランスが重要なのです
 
頑丈な船を素早く造って出向し、何度もぶつかる困難に対して適正かつ迅速な判断をしながら航海できるバランスの取れた船だけが大航海時代では生き残れるのです。
 
同じように、会社も、しっかりかつスムーズな設立・経営を維持しているバランスの取れた会社が成長し、利益を還元していくことが社会にとっても望ましいのです。
 
これを、会社法では、会社の適正化と合理化のバランスといい、会社法の勉強をする際の大きな視点となりますので参考にしてみてください。
 
この大きな視点で会社設立までの手続きの流れをみていきましょう。
 
会社の設立というのは、いわば社会という大海原に旅立つ新しい船を造ることと同じです。
 
荒波を乗り越える船を造るためには、不正のないしっかりした設計図が必要です。
 
この設計図にあたるのが、会社の根本規則である定款です。
 
まず、定款を作成して、認証を受けなければなりません(会社法26条1項、30条)。認証を受けるのは、定款の内容を明確にして、不正行為などを防止するためです。
 
次に、船を作るには、材料費や工賃などがかかりますから、お金が必要です。このお金にあたるのが、出資です(34条、63条等)。出資は、2種類あります。
 
発起人が全て出資する場合(発起設立)と発起人および他人からの出資を募る場合(募集設立)です。
 
発起設立は、イメージで例えると、航海にいこうとする者が、自ら船の設計図を造り、お金もだし、自ら船に乗って、お宝を探しにいくという過程をすべて発起人だけで行う場合をいいます。
 
これに対して、募集設立は、お金は全部だせないが、後は基本的に全てやる場合をいいます。
 
次に、実際に航海する際の、船の船長や乗組員を決めます。
 
これにあたるのが、取締役等の役員の選任です。
 
そして、出国審査を経て、完成した船をお披露目して、いよいよ出航することになります。これにあたるのが、設立登記です(49条)。
 
登記がされれば、公示されますから、対外的にも会社が成立したことがわかります。
 
最後に、もし船の造船過程・完成に関して違法・不正なこと等が行われていたならば、そんな悪いことをした造船関係者らは責任を取らなければなりません。
 
これにあたるのが、発起人等の責任です。(52条、103条等)以上の手続きの流れを示すと、以下になります。
 
①定款の作成・認証(定款は、会社の根本規則で、船の設計図です。)
②出資(設立時の株式発行等により、会社財産の基礎を形成する。資金集めです。)
③取締役等の選任(設立後の会社経営者等を決めます。船長等の選任です。)
④設立登記(登記がされて初めて法人格を付与されます。出国審査です。)
⑤責任
 
このように、会社の設立は、定款→金→人→登記→責任という5段階の手続きの流れを、まずは原則として押さえておきましょう。
 
この流れを原則として、この流れにあてはまらないものを例外として考えていけば理解しやすいと思います。
 
では、本問を正解するためには、最小限どの肢がわかればよいでしょうか。正攻法で解くなら、イとオ、消去法で解くなら、アとウの2肢さえわかれば、この問題は解けます。
 
各々の肢は会社設立までの手続きのどの部分にあたりますか
定款→金→人→登記→責任という5段階の流れにあてはめてみると、イ=金 オ(エ)=責任  ア=人 ウ=責任となります。
 
エは責任と表裏の関係にある権限の問題なので責任と考えてよいでしょう。これらの肢を正解するための必要最小限度の知識は何でしょうか。必要最小限度の知識は、
 
イ=現物出資と財産引受けの区別
オ(エ)=発起人の責任(権限)
ア=発起設立と募集設立の区別
ウ=引受人の失権
 
ただし、必要最小限度の知識は、現段階では個々人の勉強の進み具合によっても異なりますので、あくまでも目安と思ってください。
 
なぜ、これらが必要最小限度の知識となるのか、大きな視点、手続きの流れ等を結び付けて考えてみましょう。
 
なお、基本的に、→は、上位概念→下位概念を表しています。
 
また、=は、同一範疇や種類の一つなどを、⇔は、交換関係を表しています。会社設立のマインドマップも参照してみてください。
 
<イ>
 
原則として出資の方法は金銭であり、この出資に対して設立後に株式が株主に発行されます。
 
原則:会社の設立→出資=金⇔株式→34条・63条
 
例外として現物出資や財産引受があります。
 
会社の設立→現物出資→出資=物⇔株式→34条(28条1号)
 
会社の設立→財産引受→契約=物⇔(金)→34条(28条2号)
 
なお、財産引受とは、発起人が会社の成立を条件として成立後の会社のために一定の営業用の財産を譲り受ける契約ですから、取引行為です(会社法28条2号)。
 
なぜ、この財産引受が、定款に記載しないと効力が生じない変態設立事項であるのかおわかりでしょうか。
 
私的自治の原則からすれば、契約自由の原則の下、自由に取引できるはずです。
 
しかし、発起人が財産引受けの相手方から譲り受ける物を過大に評価して、市場取引価格に比べて会社が高く買い取ることで、会社の財産的基礎を危うくさせてしまうことがあるのです。
 
そこで、このような取引を防いで、設立したばかりの会社のしっかりした財産的基礎を維持するために、定款に記載させて会社の適正化を図っているのです。
 
これに対して、現物出資とは、文字通り、現金ではなく現物をもって出資することをいいます(28条1号)。
 
出資ですから、その対価として株式が発行されるのです。
 
この場合も、財産引受と同様に、出資される現物を過大に評価して、株式を必要以上に発行することで、会社の財産的基礎を危うくさせてしまうことがあるのです。
 
そこで、このような出資を防いで、設立中の会社が、しっかりした財産的基礎を形成できるように、定款に記載させて会社の適正化を図っているのです。
 
財産引受けの対価=金銭、現物出資の対価=株式という区別を押えておきましょう。 
 
<オとエ>
 
原則として発起人等の責任は、会社成立後に問われます。
 
会社成立後→責任=発起人および設立時取締役等の責任→不足額填補責任→52条1項
 
例外:会社が不成立の場合の責任は発起人が負います。
 
会社不成立→責任=発起人の責任→費用負担など→56条
 
<ア>
 
発起設立→人=取締役等の選任→発起人→40条
 
募集設立→人=取締役等の選任→創立総会→88条
 
<ウ>
責任→株式引き受けの失権=(引受担保責任)の廃止→会社法の改正=改正前商法192条の廃止
 
さて、以上の上位概念→下位概念などの流れは一体何の意味があるのでしょうか。肢イを利用して会社法の勉強方法について解説していきます。
 
まず、本問を正解するための直接的な知識は、条文です。
 
上位概念→下位概念などの流れでいうと、最下位概念にあたり、一番右端にきています。
 
イ:34条(28条1号2号)オ:56条 ア:40条
 
 
ウ:会社法の改正=改正前商法192条の廃止
 
このくらいの問題の条文を覚えることは、たいした量ではないでしょう。
 
しかし、会社法は、条文数が民法と大差ないくらい1000条近くあります。
 
その上、民法などと異なり、会社法は、既存の過去問数が少ないために、過去問以外から出題される可能性のある範囲が非常に広いのです。
 
つまり、条文でいうと、未出題の条文数の方がはるかに多いのです。
 
ですから、会社法の対策として、個々の条文を覚えて備えるというのは、同じ問題が出ればいいのですが、出なければアウト、賭けです。
 
そして、このように条文を丸暗記するという勉強の仕方は、比ゆ的にいうと「」の勉強方法です。
 
これでは、せっかく沢山の知識を持っていても本番でうまく利用することができません。
 
そこで、会社法の対策として、設立手続の流れや上位概念→下位概念などの関係性を意識しながら勉強する方法が有効なのです。
 
これが、「線」の勉強方法です。何も難しい勉強方法ではなく、普段受験生の皆さんが勉強していることをただ意識化するだけのことです。
 
お使いになっているテキストや六法で目次や設立の分野、項目などを目で追っていきながら財産引受(34条、28条2号)について記載されている箇所をご覧になってください。
 
テキストや六法では、だいたい設立の分野→出資の方法→金銭出資(原則)→財産引受け(例外)→条文という配列になっているので、各項目を通りながら財産引受にたどりつくはずです。
 
ですから、無意識的にでもこの流れに沿ってテキストや条文を勉強しているはずなのです。
 
ところが、勉強が進むと条文に近い知識が増えてきますから、財産引受の部分だけを直接確認するようになります。
 
そうすると知らないうちに、
 
設立の分野→出資の方法→金銭出資(原則) / 財産引受(例外)→条文、
 
あるいは上記の例題で出した財産引受だけの流れでみると、
 
会社の設立→出資=契約=(物)⇔(金) /  財産引受=34条(28条2号)
 
のように、/ の部分で流れが分断されてしまいます。
 
例えば、イの問題文後半の「財産引受については、発起人以外の者もその相手方となることができる。」の正誤を判断するとしましょう。
 
分断された状態では、「点」の記憶に頼ることになるので、財産引受ってどういう意味だっただろうと必死に条文を思い出す方向に思考がいきます。
 
財産引受の意味を思い出すのにそれよりも下位概念である条文の文言などさらに細かい情報を必死に思い出して解決しようと思ってしまうのです。
 
勉強が進むと、知らないうちにだんだんこの傾向が強くなっていきます。憶えた方が早いという意識=「点」の勉強方法による賭けに頼ってしまうのです。
 
これに対して、流れが分断されないように「」を意識しながら勉強していると、この流れを逆方向に戻ることができるようになっていきます。
 
そうすると、上記の問題の正誤に迷った場合、条文が思い出せなくても、その一つ上の上位概念に戻って考えることができます。
 
会社の設立←出資の方法=契約←財産引受け=34条(28条2号)
 
つまり、財産引受けの意味を一つ上の上位概念の「契約」に戻って考えることができるのです。
 
後はこれに自分の持っている基本的な理解を活用すれば、十分正誤が判断できます。
 
<イ>
 
まず、問題文の後半部分「財産引受については、発起人以外の者もその相手方となることができる」からみていきましょう。
 
民法でも勉強したように契約には相手方が必要です。
 
発起人一人でも会社を設立できますから、発起人と契約する相手方が発起人以外の第三者になることがあるのは当然です。
 
そうすると、「財産引受については、発起人以外の者もその相手方となることができる。」が正しいとわかりますね。
 
もし条文を忘れてしまっていても、より上位概念であり、かつより基本的な知識である「契約」に戻って考えれば、正解できるのです。
 
より上位概念で問題が正解できるのであれば、それだけ理解して憶える量は減っていきます。
 
この「契約」がこの問題の後半部分の必要最小限度の知識であり、上記の「契約」に対する基本的な理解が必要最小限度の理解です。
 
このように、普段の勉強で「線」を意識して、上位概念⇔下位概念という振り子のように行ったり来たりできるようにしておくと、本番で実際に問題を解くときに大いに役立つのです。
 
次に、イの問題文前半部分「会社の設立に際して現物出資を行うことができるのは発起人のみである」の正誤についてみていきましょう。
 
設立の場面での現物出資は、発起人のみができます。
 
そして、現物出資は募集株式発行(199条1項柱書)の場合もでき、この場合は、発起人以外の者もできます(208条2項)。
 
これらの知識があれば、簡単に正誤がわかるのですが、もし、本番で「発起人のみ」の正誤で迷ったとき、どう対処しましょう。
 
条文を思い出そうという「点」で考えても「発起人のみ」か「発起人以外の者も可」で迷うだけです
 
しかし、上位概念に戻って、自分の持っている基本的な理解を活用すれば正解を導けます。
 
まず、ここで迷うということは、募集株式発行に現物出資があることまでは押さえているはずです。
 
募集株式における現物出資について、同じように上位概念→下位概念で示すと、
 
会社の合理化→募集株式発行→現物出資=物→発起人以外の者も可→208条2項
 
となります。
 
そして、上記の設立の場合の現物出資との分岐点は、上位概念の募集株式発行と会社の設立の部分です。
 
この募集株式発行と会社の設立を比較して、会社の適正化と合理化の要請という大きな視点から考えます。
 
募集株式発行というのは、機動的な資金調達をして、会社の組織的規模を拡大する場面ですから、迅速性が重視されます。
 
つまり、慎重さが要求される設立の場面よりも会社の合理化の要請の方が強いのです。
 
会社の合理化→募集株式発行
 
会社の適正化→会社の設立
 
後は、「発起人のみ」か「発起人以外の者も可」のどちらが会社の適正化と合理化とより結びつくかを自分の持っている会社法の基本的な知識で考えればよいのです。
 
発起人とは、自分で会社を興そうとしている人です。
 
すぐつぶれそうな会社を設立しようなどとは通常思いませんし、5段階の手続きの流れでみたように、違法なことをすれば責任を問われます。
 
これに対して、発起人以外の者は、出資者、つまり投資家です。
 
株主になろうとするわけですから、出資した分は損しますが、その責任は有限です(株主有限責任 104条)
 
ですから、より責任の重い発起人のみの現物出資の方がより慎重であることは推測できます。
 
そうすると、上記でみたとおり、設立と募集株式発行では、慎重さは設立の方が要請されますから、慎重な現物出資つまり会社の適正化に結びつくのは、「発起人のみ」の方ですね。
 
 
これで、仮に条文を忘れてしまって迷ったとしても、イの問題文前半「発起人のみ」は正しいとわかるわけです。
 
この問題を正解するための必要最小限度の知識は、現物出資には、会社の設立と募集株式発行の場合の2種類あることです。
 
そして、上記の会社の設立と募集株式発行に対する基本的な理解が、必要最小限度の理解です。
 
要するに、会社の適正化と合理化という大きな視点と発起人の責任、株主有限責任、この理解だけです。
 
これらのイの前半・後半部分の問題を合わせると、イ全体を正解するための必要最小限度の知識は、まとめてしまえば現物出資と財産引受けの区別となるのです。
 
よって、イは正しいです。
 
この必要最小限度の理解を伴った必要最小限度の知識があると臨機応変に問題が解けるようになるのです。
 
行政書士試験では、細かい条文知識がないと解けない問題はほとんど出ません。
 
誰もが最初のころに勉強するような基本的な条文知識と、その知識を裏付ける理解があればほとんどの問題が解けます。にもかかわらず、知識偏重型の勉強方法を取るのは非常にもったいないです。
 
そして、上記で示した必要最小限度の知識を身につけるために、必要最小限度の理解が必要なのです。
 
この必要最小限度の理解を身につけるには、普段の勉強から上位概念⇔下位概念を振り子のように行ったり来たりすることを意識することが大事なのです。
 
以上をまとめると、
 
(1)
 
普段の勉強で「線」を意識して、上位概念⇔下位概念というように、行ったり来たりできるようにしておく。
 
要するに、今自分がどの分野のどの項目のどの部分(原則?例外?)を勉強しているのかをテキストや条文の体系、項目の流れをただ強く意識するだけのことです(木を見て森をみずにならないようにする)。
 
(2)
 
過去問などを解くときは、常に会社の適正化と合理化の視点を持って、上位概念⇔下位概念のどこの段階までを知っていれば正解できるのかを意識する。
 
これが、その問題を正解するための必要最小限度の知識になります。
 
なお、出題形式の違いも意識して、簡単な肢から解いて正解率を上げる訓練も同時にしてみてください。
 
(3)
 
必要最小限度の知識を身につける必要最小限度の理解は何かを考える。
 
その際、必要最小限度の理解を支える基本的な知識・理解は何かを考えて、テキストや条文などを確認する。
 
例えば、上記のイの例ですと、契約の意味、発起人の責任、株主有限責任などです。
 
(4)
 
 (1)~(3)を何度も繰り返す。繰り返していくと、不要な知識は減っていく代わりに、受験生なら誰でも知っている基本的な知識は確実になっていきます。
 
このように普段から意識して勉強したり、過去問を解いたりしていくと、全体の関係性もみえてきますから、未出題の問題にも応用しやすくなります。
 
この勉強方法を意識化することが、過去問を意識して解く、の意味なのです。勉強方法の一つとして、参考にしてみてください。
 
<オとエ>
 
オとエはいわば表裏の関係にあるので、一緒に解説していきます。
 
定款→金→人→登記→責任という手続きの流れからすると、会社が設立するまでに取締役等が選任されているはずです。
 
それなのに、結果的に会社不成立の場合には、それらの取締役等は責任を負わなくていいのでしょうか。
 
設立時取締役等は、文字通り会社の「設立時」、つまり登記によって会社が成立して初めて会社の機関としての立場で業務執行権限と責任を負うのです。
 
設立時取締役等は、船で言うと船長などの乗組員ですから、船が造られ、出航して初めて船長などの立場で舵を取り、責任を負うのです。
 
ですから、設立中は、設立時取締役等が発起人に代わって業務執行権限を有しないし、会社が不成立ならば、責任も負いません。
 
そうすると、後は権限や責任のあるものは、発起人しかいませんね。ですから、設立中は発起人が権限をもち、会社不成立の場合は発起人が連帯して責任を負うのです。
 
なお、連帯して責任を負うのはわかりますか。
 
会社というのは、民法上の個々人でなされる契約と異なり、関わる人や組織(その他の会社など)の量が多いですから、発起人が複数いた場合、より重い責任を負わせるために分割責任ではなくて、連帯責任を負わせたのです。
 
民法よりも債権債務関係が強化されているのです。
 
権限のあるところに責任もあり、権限の大きさに比例して、責任も大きくなっていくのです。
結局これらの肢は、発起人の権限と責任を問うているのです。
 
そうすると、オの正誤は、仮に条文(56条)を知らなくても、上記の程度の発起人の責任についての基本的なことがわかっていれば判断できます。
 
エも、権限は、責任と表裏の関係にありますから、発起人の権限の基本的なことがわかっていれば判断できます。
 
よって、オは正しく、エは誤りです。
 
なお、会社がいったん設立してしまえば、設立時取締役等の設立中の行為について責任を問われることには注意してください(52条 53条参照)。
 
<ア>
 
どうして、創立総会は、募集設立の場合にしかないのでしょうか。
 
上記で解説したように、出資者が発起人のみの場合が発起設立で、出資者が発起人および第三者の場合が募集設立です。
 
そして、取締役等の選任は、出資者によって決定・選任されますから、第三者が参加している場合は、選任手続きが公正かつ明確でなければなりませんので、創立総会が開かれるのです。
 
イメージでいうと、第三者たる出資者は、発起人にとっていわば後援者ですし、後援者同士が互いに知らない可能性がある中で今後の会社経営者を選任するわけですから、それなりの会合が開かれなければならないのです。
 
これに対して、発起人は一人でも会社を設立できますから、自分一人で選任するのに創立総会を開く必要もないですし、複数いたとしても、共にこれから会社を設立していこうといういわば仲間あるいは同士ですから、発起人組合という民法上の組合で取締役等を選任しても問題ないのです。
 
ですから、創立総会は募集設立だけで行われるのです。
 
そうすると、アの正誤は、発起設立と募集設立の区別がつけば判断できますね。
 
よって、アは誤りです。
 
<ウ>
 
募集株式の引受人が払い込みをせずに失権したら、出資されないことになるので、本来会社に入ってくるはずの財産が減ってしまいます。
 
この場合の引受け責任を、会社法改正前は、発起人に負わせていました(引受担保責任 改正前192条)。
 
それは、設立時に発行する株式総数が定款記載事項になっていたからです。
 
例えば、設立時に発行する株式総数を定款で1000株としていた場合に、株式の引受けが失権して、900株となったとしましょう。
 
この場合でも、資本金が1000万以上であり、他の法令違反がなければ原則として会社は設立できました。
 
もっとも、定款に記載した株式総数に達していませんから、この責任を発起人に負わせていたのです。
 
株式の引受けが失権した場合、およびそれに伴って出資も払い込まれませんから、引受け・払込み担保責任を負わせていたのです。
 
会社を設立すれば、多数の利害関係人がでてきますから、慎重な設立が求められていたのです。現在の会社法よりも会社の適正化の要請が強かったのです。
 
しかし、こうした責任を負わされるような慎重さを要求されると、会社を設立しやすい社会的な環境にあるとはいえないですね。
 
ちょうど改正前当時は、いわゆるバブル時代の崩壊で社会的な景気が低迷していたため、社会経済の発展する環境を作ることが必要でした。その一つが会社法の改正です。
 
若くて才能はあるがお金がない人でも会社を立ち上げて、いわばベンチャー企業をどんどん設立して社会を活性化してもらおうということが要請されたのです。会社が増加すれば、雇用も促進され税金も増加するからです。
 
そこで、改正の一つとして、上記の設立時に発行する株式総数を定款記載事項から除去して、代わりに「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」(27条4号)が定款記載事項になりました。
 
これにより、発起人が自分で決めた設立に際して出資される財産の最低額さえ満たせば、設立ができるようになりました。
 
最初から定款で株式総数を決定しなくてもいいし、極端にいえば1円からでも会社が設立できるようになったのです。
 
そのため、株式の引受けがなされず失権しても、上記の最低額さえ満たせばいいので、責任を負う必要がなくなったのです。
 
なお、ウの肢は、募集設立の場合を聞いていますが、それは改正前では、失権する場合が募集設立のみで、発起設立の場合は規定されていなかったので、その混同をねらったのでしょう。
 
改正後は、発起設立の場合でも、失権するようになりました。
 
そうすると、ウの正誤は、会社法改正後の引受人の失権あるいは引受け担保責任の廃止についてわかっていれば、判断できます。
 
仮に、この引受人の失権という具体的な知識がなかったとしても、上記のような会社法の改正の趣旨がわかっていれば、会社をより設立しやすくして、会社の適正化よりも合理化を要請したものであることはわかるはずです。
 
そうすると、それに伴い発起人の責任が軽減されるだろうという推測もできるでしょう。
 
この場合は、会社法の改正=発起人の責任の軽減という理解があれば、このウの正誤が判断できます。
 
わからないときは、上位概念に戻って少し大雑把に考えてみるということも大事な戦略の一つなのです。
 
よって、ウは誤りです。
 
以上から、本問は、基本的な知識と理解だけですべて解けてしまいます。
 
しかも、2つの肢、正攻法ならイとオ、消去法ならアとウ、どちらかだけで正解できてしまう問題ですから是非とも正解したい問題の一つです。これで、本問自体の解説は終わります。
 
もっとも、会社法の範囲は広いですから、過去問を勉強するだけで対策になるのか不安に思われる方もいらっしゃると思います。
 
会社法は範囲が広いので、どこから手をつけてよいか、どこまでやったらいいのかの判断が非常に難しい科目の一つです。
 
それに対処するには、やみくもに会社法の全範囲を勉強するよりも、まずは過去問から得た理解と知識を核となる骨格としての情報を整理することが重要です。
 
この核となる骨格を作りあげれば、あとはそれに少しずつ肉付けしていくという勉強方法の方が少ない情報からスタートするので合理的だからです。
 
過去問を利用して集約された知識が最も基本的な骨格となると思ってください。
 
なお、会社法の全体像はテキストや条文などで確認して、どんなことを勉強するのかくらいは把握しておいてください。
 
その際、会社の適正化と合理化という大きな視点は常に意識するようにしましょう。
 
 
今回はこのあたりで終わります。
 
 
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